ネタと燃えと萌えが三大栄養素。過去を振り返るのが特技です
給料貰えるかも危ういんだとか。ご愁傷様です。支払われることを願ってます。
万事屋からの帰り、ふと思い立って久々に家の近所の神社に寄ってみた。そう大きくない、どこにでもあるような神社だったが、小さい頃は寺子屋の帰りによく遊びに来たものだ。懐かしさを覚えながら、石造りの階段を上る。この階段も、昔はもっと長く感じた。赤い鳥居をくぐって、階段を上りきると境内が現れる。社まで続く参道と、その両側に植えられた木々。手水場に社を守る狛犬。また数段の階段を上って、社の前までたどり着く。賽銭箱に凭れかかって、ぼんやりと景色を見渡した。誰もいない。子供たちは家に帰ったのだろう。時刻は夕暮れ時で、鮮やかなオレンジ色が世界を包み込んでいた。
何もかもが記憶の中の風景と一緒だった。風景どころか、心に込み上げてくる感情までも。
(まるで、世界に一人だけ取り残されたような)
新八は小さい頃を思い出した。友達と遊んでいると、大抵皆母親が迎えに来た。その手に引かれて、一人、また一人と帰って行った。いつだって最後に残るのは自分だった。母は幼い頃に死んだ。父は遅くまで仕事で、姉は姉自身の友達と遊ぶことが多かった。皆が帰ってしまった後で、一人家路に着くのが常だった。寂しいとは思わなかった。それが自分にとって「普通」のことだった。友達の母親が時折向けて来た視線の意味にも気付かなかった(憐みだったのだと今なら分かる)。ただ時折、誰もいない境内で、文句のつけようのない見事な夕焼けに包まれると、何か言葉に出来ない感情が胸に溢れて来るのが分かった。
そう、今まさに感じている、孤独感が。
おめでたい話だが、当時は全く気付いていなかった。あれから成長し、語彙も増えた今になってやっと気付いたのだ、自分があのとき感じていた思いが何だったのか。それがいいことなのかはまた別として。
今この状況において、自分は紛れもなく一人だった。時折聞こえる烏の鳴き声と、風で揺れる木々のざわめきの他は何も聞こえない。なんとなく、膝を抱えて顔を伏せた。
どれくらい経ったのか、といってもそんなに時間は経っていないのだろうけれど、ざり、という音に少しだけ顔を上げた。人の影が視界に入った。オレンジの世界に射した、黒い影。その影だけで誰だか分かる、特徴的なシルエット。
「……アンタって影ですぐ誰だか分かりますね」
「おま、それ嫌味か? それともいじめかコラ。いじめられっ子みたいなカッコしてるくせに言葉攻めですかコノヤロー」
「……なに訳の分かんないこと言ってんスか」
よく分からないセリフに呆れを込めてそう返せば、俺が知るかよ、という言葉が返ってきた。
「三角座りで頭膝にくっつけて、なんて完璧いじめられて泣いてる子供の図じゃねーか。一体何してんだよおめーはこんな所で」
言いながら近付いて来る銀時を見上げて新八は、はて自分はここに何をしに来たのだったか、と首をかしげる。特に目的はなかったはずだ。ただなんとなく、思い付きでここに来ただけだ。
「何してるって言われても困るんですけど。ここ、小さい頃よく遊びに来た神社なんですよ。家に帰る途中に、久々に寄って行こうかな、と思っただけで」
そう言うと、ふぅんというやる気のない返事が返ってきた。聞いて来たのはそっちなのにどういう態度だと思ったが、この男にやる気がないのはいつものことだと思い留まる。代わりに別のことを聞いた。
「ところで、何でアンタがここにいるんです」
いつも通り依頼もなく、夕食の当番も自分ではなかったので早目に万事屋を出たのに、そこの主が何故こんな所にいるのか。銀時はやはりやる気のない声で答えた。
「さっきお妙から電話があってよー、今日急に志村家に女友達呼ぶことになったからお前をうちに泊めろってさ」
「あ、そうなんですか」
女だらけのお泊り大会が開催されるのだ。確かに自分は家にいない方がいいだろう。でもそれならわざわざ来なくても電話を入れてくれればいいのに、と思ったら、銀時が続けた。
「何なんだよお前、電話してみてもお前まだ帰ってなかったし、そんなら原チャで拾った方が早ぇやと思ってお前んちまでいっても誰もいねえし、追い越したかと思って来た道戻ってもいねえし、なんかこんなとこで小さくなってるし」
「……えーと、もしかして」
探してくれてたんですか、と小さい声で聞くと、視線を逸らして頭をがりがりと掻きながら、手間かけさすな、と小さな声で返してきて、その仕草に思わず吹き出してしまった。
「何笑ってんだ」
「す、すいません。あの、有り難うございます」
「ふん」
少し不機嫌そうにしたが、銀時はすぐに視線を戻した。
「新八」
改めて名前を呼ばれてはい、と返事をした。銀時は座り込んでいる新八に手をのばして、
「帰んぞ」
と一言言った。
「……」
新八は一瞬ぽかんとしてのばされた手を見た。それから銀時の顔を見て、もう一度手を見て、そしてもう一度銀時を見た。それから、にこりと笑った。
「はいっ」
返事をして銀時の手を握った。ぎゅ、っと力を込めると、銀時も同じくらいの力で握り返してきた。それに笑みを深めて、新八は銀時の名を呼んだ。
「銀さん」
「ん?」
「有り難うございました」
「……おーよ」
銀時が新八を引き寄せて、二人並んで階段を下りる。オレンジの空は、紫に移ろうとしていた。
手を引いてくれる人を、無意識に待っていた。有り難う、それに気づいてくれた人。
なんかこっぱずかしいモノが出来上がった気がする。最近お題に沿えてるか果てしなく不安です。
年末なので部屋の片づけを始めました。本棚の整理に手をつけて、とりあえず薄っぺらい本を整理してました。
なんで銀魂本売ったんだ数か月前の私ィィィィ!!!!(号泣
殴りたい。数か月前の私を殴りたい。
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