ネタと燃えと萌えが三大栄養素。過去を振り返るのが特技です
※闇表で外/科/室
もう九年も前になる。アテムがまだ医科大学の学生だった時に、俺はあいつを誘って植物園に行った。五月五日の、ツツジの花が盛りの時期だった。園内を散策し、池のそばを歩いていた時、向こうから数人の客が歩いてきた。髭を蓄えた洋装の男が前に一人、後ろに一人。そしてその二人に守られるように、三人の若い女がいる。日傘を差し、いかにも貴族然とした裾捌きでするすると歩いて行く。その一群とすれ違う時、アテムは思わずといったように後ろを振り返った。
「見たか」
俺がそう言うと、
「ああ」
とアテムは返した。それからまた歩いていると、ベンチに座った男たちがしきりに先ほどの女たちのことを噂している。いずれ菖蒲か杜若、だの歩き方が霞に乗っていくようだった、だのと褒めそやしているその前を通り過ぎると、アテムが俺に言ってきた。
「真に美しい人の、人の心を動かすことあの通りさ。君も絵描きとしてそんな絵が描けるように精進しろよ」
俺は絵描きの性分として美しいものに心をすっかり持っていかれるということはない。またしばらく歩き、ふと後ろを振り返ると、樟の大樹の木陰の向こう、やや薄暗いところを行く藤色の衣がちらりと見えた。
それから九年間、アテムがその日のことを口にすることは一度としてなかった。大学を卒業し医学士になっても妻を貰うこともせず、謹厳実直という言葉を絵に描いたような男であり続けた。そんな男が、どれだけの熱い思いをその胸に秘めていたのか。きっと、俺ごときには推し量れない。
『痛むか』
『ううん、君だから、君だから』
『でも、君は、僕のことを知らないでしょう!』
『忘れない』
そう、俺はあの時のことを生涯忘れる事はないだろう。麻酔も打たずに胸を裂けと懇願したあの時の貴族と、それに違うことなく応えたアテムの姿を。その時のあの人の幸せそうな笑顔と、青ざめながらも確かに愛を誓ったアテムの顔を。
場所こそ違えど、二人は同じその日に前後して命を絶った。俺には分からないから、宗教に詳しい誰かに聞こうと思う。彼ら二人は、罪悪を背負い、天へ昇ることを許されないのだろうか。
高峰→王様 伯爵夫人→AIBO 語りの画家→城之内
なんか全然違う話になってしまったような……(汗 外/科/室は色んなジャンルでパロってる方がいるから結構有名かもしれません。ちなみに出てこなかったけど伯爵は社長です。相変わらず役回り超不憫!←
いないとは思いますが、書きやすいようにって話の順序とか弄ってるのでこんな話なんだーとか思わないで下さいね。あくまでパロなので。内容は一応準拠させてるつもりですが。でもやっぱり難しい。特にAIBOの性別をもう素直ににょたにしてしまうか、それともぎりぎりまでぼかすかっていう(そこかよ でもその数倍楽しい。AIBOの相手を王様にするか社長にするか考えるのとか。
しかしそろそろ社長を幸せにしてあげたいなあ……。
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