ネタと燃えと萌えが三大栄養素。過去を振り返るのが特技です
・バレンタイン遅刻話
・十年後設定(GX軸)
・お酒とか飲んでる
・文中のマナー知識は書き手のうろ覚えの部分が多いので間違っててもスルーで
・社長がなんというかロマンチストっぽくてむず痒い
・バレンタインのバの字もない
・でもバレンタインと言い張る
そんな感じでも良ければどうぞ↓
・十年後設定(GX軸)
・お酒とか飲んでる
・文中のマナー知識は書き手のうろ覚えの部分が多いので間違っててもスルーで
・社長がなんというかロマンチストっぽくてむず痒い
・バレンタインのバの字もない
・でもバレンタインと言い張る
そんな感じでも良ければどうぞ↓
肩の凝るようなコース料理も、海馬の家で食べる分にはだいぶ馴れた。ドレスコードはないし、周りの雰囲気に気圧されることもない。それでいて料理の味は一級品。贅沢極まりないとはこのことだろう。食器の使い方には、正直この状態でも不安があるけれど。
机を挟んで向こう側に座る彼を見れば、馴れた様子で銀色の食器を操っている。実際にどうだか知らないが、きっととても正しい作法で食べているのだろうと遊戯は思った。プライベートだけでなく、仕事でもこういう料理を食べることもあるのかもしれない。
所謂接待というものの形を、ひどくおぼろげな図で想像した。
「遊戯?」
視線に気付いてか海馬が手を止める。
「どうした。口に合わんか」
その言葉に、遊戯は慌てて首を振った。
「まさか。美味しいよ、いつもと同じで」
そう言って皿の上の料理を口に運ぶ。今目の前にあるのは白身魚の料理……確かポワレとかいったか。馴れない魚用のナイフを使って切り、フォークで口に運ぶ。
「ただ、なかなかマナーに馴れないなと思って」
柔らかなそれを飲み下してからそう続けると、海馬はそうか、と頷いた。
「まあ、こんなものは数をこなせば馴れる」
それはつまり、馴れるまで一緒に食事をしてくれるということでいいのだろうか。ひょっとして、馴れてからも。遊戯は内心で喜んだ。
それからはとりとめのない会話が続いた。遊戯の旅の話、海馬のデュエルアカデミアの話、モクバや友人たちの話。食後にデュエルをする約束もした。
二人の皿が空になったところで給仕係が二人出てきて皿を下げる。間もなく次の皿が運ばれてきた。遊戯は海馬に分からないように小さく笑う。皿に載せられた料理が、海馬の一番の好物だと気付いたからだ。勿論とても美味しい料理なので、遊戯も好きだけれど。
料理を持ってきた二人が退出すると、入れ違いに別の男が入ってきた。手にはワインのボトルを持っている。そういえば肉料理には赤ワインなのだっけ、と遊戯は以前海馬に教わった知識を引っ張り出す。男は海馬の傍まで来て何事か海馬に話し掛けた。海馬が頷くと、男は小さく一礼して、今度は遊戯の傍にやって来る。
「?」
不思議そうに男を見る遊戯に、男は軽く屈んで手に持ったワインボトルを示す。
「……年のボルドーでございます。宜しいでしょうか?」
「え、あ、はい」
とっさに頷く。男は一つ礼をしてソムリエナイフを取り出し、ワインのコルクを抜き始めた。
「……」
その動きをぼんやり見ながら、遊戯は考えた。告げられた年に遊戯の中で何かが引っ掛かる。はて、何だったろうか。
その動きをぼんやり見ながら、遊戯は考えた。告げられた年に遊戯の中で何かが引っ掛かる。はて、何だったろうか。
小気味良い音を立ててコルクが抜かれた。男がボトルを傾け、グラスにワインを注ぐ。その間も、遊戯の思考は止まらない。
(何となく印象に残る年なんだけど)
告げられた年を舌の上で転がす。 ……年、ということは、つまり今から……
(あ、)
遊戯はぱちりと瞬きした。意識を現実に戻すと、男は海馬のグラスにワインを注ぎ終えたところだった。二人に向かって男が一礼し、ワインを机に置いて部屋を出ていく。
「これ」
「この年のボルドーは出来が良いのだそうだ。それに、そろそろ飲み頃だというしな」
遊戯が声を掛けようとすると、それに被せるように海馬がそう告げた。
「そうなんだ」
遊戯は自分のグラスを見る。
「ね、海馬君」
「何だ」
遊戯は海馬の方に顔を向けた。海馬の青い目がこちらを見ているのを確かめて、口を開く。
「……」
けれど、そこから言葉は出てこなかった。海馬も急かすような真似はしない。
グラスを手に持って、遊戯はもう一度ワインを見る。
深い、深い赤色。これが瓶の中で長い時間を眠っていたのだ。
――遊戯と海馬が出会った時から、今日のこの日まで十年間。
「……デザートは、チョコレート系だと嬉しいんだけど」
結局口にしたのはそんな言葉。ワインの良し悪しなど分からないけれど、遊戯にとってはこのワインが供されたこと……それを海馬と二人で飲んでいること。それだけで十分だ。
遊戯の言葉に、海馬はくつりと笑った。
「お前が鞄に入れたままのものを俺に渡せば考えてやるが」
海馬らしい物言いに、思わず遊戯も笑う。
「えー、どうしようかな。――そうじゃなくて、デュエルで勝ったら、なんていうのは?」
「ふん、釣り合いが取れんな。お前もつけろ」
「直球だなあ。――いいよ」
「決まりだな」
満足げに頷く海馬。デザートのメニューなど初めから決まっているだろうに、ゲームを面白くするためのプロセスは惜しまないのだ。もっとも、それは遊戯にも言えることだったけれど。
海馬がワインを口に含んだ。遊戯もつられるように傾ける。口の中に程好い渋みが広がった。飲みやすいけれど、軽くはない。
「……美味しいね」
遊戯が呟く。シンプルな感想だった。
それを聞いて、海馬も「そうだな」と頷いた。どこか嬉しそうな声だった。
(あ、)
遊戯はぱちりと瞬きした。意識を現実に戻すと、男は海馬のグラスにワインを注ぎ終えたところだった。二人に向かって男が一礼し、ワインを机に置いて部屋を出ていく。
「これ」
「この年のボルドーは出来が良いのだそうだ。それに、そろそろ飲み頃だというしな」
遊戯が声を掛けようとすると、それに被せるように海馬がそう告げた。
「そうなんだ」
遊戯は自分のグラスを見る。
「ね、海馬君」
「何だ」
遊戯は海馬の方に顔を向けた。海馬の青い目がこちらを見ているのを確かめて、口を開く。
「……」
けれど、そこから言葉は出てこなかった。海馬も急かすような真似はしない。
グラスを手に持って、遊戯はもう一度ワインを見る。
深い、深い赤色。これが瓶の中で長い時間を眠っていたのだ。
――遊戯と海馬が出会った時から、今日のこの日まで十年間。
「……デザートは、チョコレート系だと嬉しいんだけど」
結局口にしたのはそんな言葉。ワインの良し悪しなど分からないけれど、遊戯にとってはこのワインが供されたこと……それを海馬と二人で飲んでいること。それだけで十分だ。
遊戯の言葉に、海馬はくつりと笑った。
「お前が鞄に入れたままのものを俺に渡せば考えてやるが」
海馬らしい物言いに、思わず遊戯も笑う。
「えー、どうしようかな。――そうじゃなくて、デュエルで勝ったら、なんていうのは?」
「ふん、釣り合いが取れんな。お前もつけろ」
「直球だなあ。――いいよ」
「決まりだな」
満足げに頷く海馬。デザートのメニューなど初めから決まっているだろうに、ゲームを面白くするためのプロセスは惜しまないのだ。もっとも、それは遊戯にも言えることだったけれど。
海馬がワインを口に含んだ。遊戯もつられるように傾ける。口の中に程好い渋みが広がった。飲みやすいけれど、軽くはない。
「……美味しいね」
遊戯が呟く。シンプルな感想だった。
それを聞いて、海馬も「そうだな」と頷いた。どこか嬉しそうな声だった。
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